@phdthesis{oai:mejiro.repo.nii.ac.jp:00001596, author = {浜田, 陽子 and HAMADA, Yoko}, month = {2020-03-17, 2020-03-17}, note = {2016年度, 本研究は外食チェーン店舗におけるリーダーシップ・プロセスに着目した。特にリーダーシップ行動のリーダー・アウトカムへの影響に注目し,店長のリーダーシップ行動がフォロワーシップを媒介し,店長自身の職務満足に至るモデルを職業性ストレスモデル(Job Demands-Resources Model)(Bakker, & Demerouti, 2011)を参考に構築し,検討を行った。 Ⅰ 序論 第1章では,研究の背景として対象の外食チェーンの概要と店長の特徴,その職業性ストレスの状況について概観した。店長と店舗スタッフ(その多くはパート・アルバイト)という職場特性を踏まえ,リーダーシップ・プロセスのリーダー・フォロワーの双方向の影響性からスタッフのフォロワーシップ行動が店長の仕事の資源となりポジティブな影響を及ぼす可能性があると考え,店長自身のリーダーシップ行動がフォロワーシップを媒介して店長の職務満足等に影響するモデルを提示した。 第2章では,本研究の以下の3つの目的を提示し,研究意義について言及した。①店長の視点からリーダーシップ行動とフォロワーシップ認知の概念を明らかにし,リーダーシップ,フォロワーシップに関する知見を提供する。②職業性ストレスモデルに基づき,店長のリーダーシップ行動がフォロワーシップを媒介し店長自身の職務満足に及ぼす影響を検証する。③店長のリーダーシップ行動の影響について自己評価・フォロワー評価の関連性の検討や,リーダーシップとフォロワー行動の関連を検討することにより,より効果的なリーダーシップ行動について検証する。 Ⅱ 理論的検討 本研究では,リーダーシップをリーダーとフォロワーが相互に影響し,リーダーからフォロワー,フォロワーからリーダーへの働きかけの両方のプロセスを含むものと捉え,この広義のリーダーシップの枠組みをリーダーシップ・プロセスと操作的に扱った。第3章では,まずリーダーシップ研究の展開とフォロワーの扱いについてレビューを行い,そのうえで近年注目始めているフォロワーシップ理論について概観した。 これらを踏まえ,本研究ではリーダーシップ・プロセスを「グループの成員が共通の目標を達成するために,個人が影響を与えるプロセス」と操作的に定義した。そのプロセスにはリーダーとフォロワーが存在し,リーダーのリーダーシップ行動,フォロワーのフォロワーシップ行動は相互に影響し,このプロセスからアウトカムが生み出されるとした。 Ⅲ 実証的研究 実証的研究を3つの研究目的に照らし,3部に分けて行った。 [第1部] 尺度作成(研究1・研究2) 店長が評価可能なリーダーシップ行動尺度およびフォロワーシップ認知尺度を作成した。店長に自由記述方式の質問紙調査を行い,店長側からのリーダーシップ行動,フォロワーシップ行動を抽出し,信頼性・妥当性の確認を行った。第4章のリーダーシップ行動尺度では,5因子17項目(模範を示す,目標を示す,ポジティブなフィードバック,配慮の提示,自律性のサポート)を抽出した(研究1)。第5章のフォロワーシップ認知尺度では,外食チェーン店長のフォロワーシップ認知尺度3因子(配慮的行動,意欲的関与行動,主体的行動)16項目を抽出した(研究2)。 [第2部] 店舗のリーダーシップ・プロセスと店長の職務満足との関連(研究3・研究4)店舗のリーダーシップ・プロセスと店長の職務満足の関連の検討を行った。 第6章では,店長のフォロワーシップ認知が職業性ストレスモデル(JD-R)の仕事の資源として機能するかどうか確認するため,先行研究に準じ,個人属性・仕事の要求・仕事の資源(フォロワーシップ認知,コントロール,上司のサポート)を独立変数とし,職務満足を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。フォロワーシップ認知のうち「意欲的関与行動」は,職務満足を説明する要因のひとつであることが示された。 第7章では,構造方程式モデリングにより本研究のモデルの検証を行った。「自律性のサポート」,「目標を示す」は,意欲的関与行動の認知を通じて職務満足に正の影響を及ぼし,GHQに負の影響を及ぼした。店長のリーダー行動がフォロワーシップの認知を媒介して自身のアウトカムに関連する可能性は示された。 [第3部] 効果的なリーダーシップ行動に関する検討(研究5・研究6) リーダーシップの効果をリーダーシップ行動そのもののスタッフへの伝わりやすさと,リーダーシップの各因子のフォロワーシップ行動への影響の強さのスタッフの特徴による相違の観点から検討を行った。 第8章では店長のリーダーシップ行動とフォロワーのリーダーシップの評価やフォロワー行動,職務満足等のアウトカムと関連を相関分析により検証した。リーダーシップ行動のうち「目標を示す」のみ店長評価とスタッフ評価に有意な正の関連が示された。またリーダーシップ行動の項目毎の相関分析では,「目標を示す」「配慮の提示」に含まれる4項目に関連が示された。これらの行動,特に「目標を示す」は自他ともに認識しやすい行動であることが推察された。 第9章ではスタッフの特徴による効果的なリーダーシップ・アプローチを検討するために,スタッフのデータによるリーダーシップ行動各因子の「意欲的関与行動」への影響を学生,アルバイト専業,主婦による多母集団同時分析により検討した。学生は「目標を示す」「配慮の提示」,アルバイト専業は「模範を示す」「フィードバック」「自律性のサポート」,主婦は「自律性のサポート」の効果が強いことが確認され,店舗スタッフの背景により効果的なリーダーシップが異なる可能性が示された。 Ⅳ 総合考察 第10章では,3つの目的に従い研究成果と知見を照らし合わせながら考察を行った。 1.外食チェーン店舗におけるリーダーシップ・プロセスの構造 リーダーシップ行動の因子構造 リーダーシップ行動は,「目標を示す」,「模範を示す」,「配慮の提示」,「自律性のサポート」,「ポジティブなフィードバック」の5因子となり,店舗スタッフ評価による因子分析でも店長評価とほぼ同様の因子構造が確認され,リーダーシップ行動として頑健であることが確認された(研究1)。しかしながら5因子の効果は,スタッフの背景により異なることが示された(研究6)。今回抽出されたリーダーシップ行動の要素は,5つすべてが全フォロワーに適用するということではなく,スタッフの状況に合わせて使い分ける必要があることが推測された。 フォロワーシップ認知の因子構造 本研究では店長が認知するフォロワーの行動に注目し,下位因子は「配慮的行動」,「意欲的関与行動」,「主体的行動」となったが,店舗スタッフ評価による分析では因子構造が若干異なることが示唆された(研究2)。“配慮的行動”と“主体的行動”は主掃と学生の間に差が示されており,主婦は全員社会性の高いとされる女性であること,平均年齢も40歳以上で社会的な経験値も高いと思われ,ほとんど初めての社会体験となる学生との間にスキルや経験に差があるからと考えられる(研究5-1)。“意欲的関与行動”は主婦と学生・アルバイト専業の間に差が認められ,仕事に対する動機づけの違いとも推測できる結果となった(研究5-1)。 リーダーシップとフォロワーシップの関連 リーダー側のリーダーシップ行動とフォロワーシップ認知を測定し,主にリーダー・アウトカムである職務満足との関連からリーダーシップ・プロセスの構造を推測しようと試みた。リーダーシップとフォロワーシップの間に関連があること,リーダーシップからフォロワーシップへの影響(研究4,研究6),フォロワーシップからリーダー・アウトカム(研究3,研究4)への影響については明らかになったが,フォロワーシップからリーダーシップそのものに与える影響についての検証は行うことができなかった。しかしながらリーダーシップ・プロセスはリーダーとフォロワーの相互の影響のプロセスであることは十分推測できる結果であり,リーダーシップ行動とフォロワーシップを対で用いたことは意義があることと考える。 2.店長のリーダーシップ行動と自身の職務満足への影響 本研究はJob Demands-Resources Model(Demerouti & Bakker, 2011)を参考に,仕事の資源としてフォロワーシップに注目し,リーダーシップ・プロセスと関連付けたモデルを構築した。このモデルについて「店長のリーダーシップ行動はフォロワーシップを媒介し,自身の精神的健康および職務満足に正の影響を及ぼす」を仮説とした。 研究4で店長データを用いた構造方程式モデリングによる検証を行い,リーダーシップ行動は,フォロワーシップ(意欲的関与行動)の認知に影響を及ぼし,フォロワーシップは仕事の資源として,GHQ得点に負の影響,職務満足に正の影響を及ぼし,仮説は支持される結果となった。店長視点ではこのモデルが成り立つことが示された。一方,研究6でスタッフデータによる検討を行ったが,リーダーシップの因子によって影響の違いが示される結果となり,実践に活かしていくためには個別具体的な検討が必要と考えられた。 本研究では効果的なリーダーシップ行動により,リーダー自身の精神的健康,職務満足を高めることができることが示された。リーダーシップ研究の数少ないリーダー・アウトカムを従属変数とした研究として,ひとつの知見が提供できたと考える。 3.効果的なリーダーシップ行動について 研究5では「目標を示す」,「配慮の提示」が伝わりやすい行動であると示されたが,それ以外については店長側のコミュニケ一ション能力や個人特性,スタッフ側の仕事の経験値や店長との関係性等により伝わる度合が変わってくることが推測される。コミュニケーション・スキルを高め,各々のスタッフの経験値やニーズ等を見定めながらアプロ一チすること等によりリーダーシップ行動が伝わりやすくなることが考えられる。 研究6では,学生には仕事の目標を示し,配慮を示す関わり,アルバイト専業・主婦には仕事を任せていくような関わりの効果が示される結果となり,この結果を踏まえたリ一ダーシップ行動を実践に活かすヒントとなると考える。しかしながらこれらの結果はあくまで今回の学生,アルバイト専業,主婦の平均的な特徴であり,そのまま全員に適用可能ということではない。個々のスタッフの経験やニーズ等を配慮しながら対応方法を考えていく必要があろう。 4.研究の限界と今後の課題 本研究のリーダーシップ行動尺度,フォロワーシップ認知尺度は外食チェーン店長視点で作成したものであり,汎用性のある尺度ではない。さらに店長と店舗スタッフのマッチングを行うことができる協力企業を得ることが非常に難しかったことから,1企業のみからのデータであるため,外食チェーンの研究としても限界がある。データの収集方法,1対多のデータの処理方法についても,よりバイアスが少なく,データを厳密に活かすことができる統計処理についても検討することが必要と考える。 本研究には限界はあるものの,明らかになった点も少なくない。次のステップとしては店長がこれらの知見を自身のスキルとして活かしていけるように,個々のスタッフのフォロワーシップを高めるようなリーダーシップ開発プログラムの検討していくことが課題である。}, school = {目白大学}, title = {外食チェーン店舗のリーダーシップ・プロセスに関する検討 ―リーダーシップ行動およびフォロワーシップが店長の職務満足に与える影響―}, year = {}, yomi = {ハマダ, ヨウコ} }